電子申請と紙申請(2)


 先月の続きです。というか、もう1か月経ってしまいした。相変わらずの更新の遅さ、申し訳ございません。

前回は、今までは紙による書類提出だった申請が、電子化に切り替わっている話。しかし、電子化と言っているわりには、実は紙に書いていたものが

ただ画面入力になっただけの内容が多い。場合によっては、紙で取り寄せた証明書類をスキャンして電子化しなければいけない分、かえって手間が増え

かねない。そんな話をしてきました。それで、前回の最後に「押印」が電子化の壁になっており、押印から逃れられない申請とは、という所で話が終わり

ました。

 前回の話はこちら

まず、法人関係では押印が必要な書類は、まだまだ数多くあります。一例として

 ・ 申請書(種類による)  ・ 委任状(委任する内容による)  ・ 定款  ・ 取締役会議事録  

ひとまず、こんなところ。その他役所関係で、雇用保険関係やら、許可・認可申請、補助金申請、工事・入札手続きなどなど。

ちなみに、川崎市の例では、押印廃止した申請書等が4,166件、廃止を検討しているのが419件との事ですが、まだまだ押印が必要な申請書も多数です。

⇒ 川崎市 市へ提出する申請書等への押印を原則廃止します

 ただ、ここで触れたいのは個人の話。

個人では何といっても相続の場面です。相続にまつわる手続において、必要書類に“印鑑証明書”がある場合がよくあるかと思います。

印鑑証明書が必要ということは、原則、実印の押印が必要であり、その印章が登録されている本人の実印であるかを確かめることにより、本人の

意思を確かめるという作業が必要だということです(ただし『相続人の住民票の写しまたは印鑑証明書』の場合は、ただ単に現住所の証明をしたいだけ、

ということもあります)。

 相続において実印の押印を求められる最たる場面は、遺産分割協議書を作成する場面です。もっとも、遺産分割の際に遺産分割協議書が必ず必要か

というとそうではないのですが・・・。この辺に関して深く突っ込んでいくと、タイトルを変えた方がよくなるので、またいずれ。といってもこんな

更新ペースなので、あまり期待をせずに・・・。

 基本的に遺言書があって、財産の分割方法が記載されていればいいのですが、遺言書がなかったり、あっても記載されていない財産がある(出てきた)

場合、相続人間でどのように分けられたのか、それによって自分がその財産の相続者であることを証明するために、遺産分割協議書が必要になります。

 士業のホームページには、作成例などが出てますが(ウチは無いな・・・)、まあそれなりのポイント・手順があります。そこで、極力手間を省きま

しょう、ということなのかはわかりませんが、行政書士に縁が深い自動車の場合は、専用のひな型が用意されています。これはウチもあります(苦笑)。

⇒ 自動車用 遺産分割協議書 (当事務所ホームページ 「自動車関係・書類一覧」へ行きます)

 これは、弊所のオリジナルではなく(「記入例」は加工していますが)、北海道運輸局HPに掲載されているものと同じです。通常の遺産分割協議書に

比べるとかなり簡易化されていますが、それでも実印の押印が必要です。その他の方法もあるのですが、どの場合でも実印の押印は必要です。

 その一方で、当欄でも触れたことが事がありますが、自動車登録関係ではOSS(自動車保有関係手続のワンストップサービス)という登録・車庫証明・

自動車税の申告・納付をインターネット上で一括で行うサービスが始まってます。国交省はやたらと推してきます。しかし、ネット上でとは言ってます

が、現状運輸支局に1度は出向く必要がありますし、車庫証明を手に入れるにしても、警察署に行く必要は無いにしても郵送作業は不可欠なので、完全な

電子申請からはまだまだ遠い状況です。そもそも、このOSSというシステムそのものも、おそらく説明を何度か読んでやっと理解できるぐらいのものと

言っていいシステムですが。それにカードリーダーなど必要な物もあります。

 もちろん、メリットもあります。受付は土休日関係ありません。時間も関係しません。わざわざ休みを取る回数を減らせます(ゼロにはなりません)。

先述しましたが、車庫証明を郵送してもらえる=警察署に取りに行かなくて良いのもメリットです。さらに、窓口手続きより手数料が安くなります。

まあ、OSSの使い勝手は今回の本筋ではないので。

 ここでの問題は、相続にまつわる手続きはOSSのサービスの対象外、ということです。基本的にOSSでは移転登録・変更登録では、旧所有者(使用

者)の(電子)委任状が必要になるのですが、相続の場合はこの旧所有者(使用者)は亡くなっているので、委任の仕様がありません。

 そこで、遺言状なり遺産分割協議書となるのですが、遺言状はもとより、運輸局で書式が出ている遺産分割協議書も電子申請に対応していません。と、

いうことで、紙申請の一択になります。そうすると、車庫証明取得のため警察署へ、登録のため運輸支局へ、という手間が必要になります。もちろん平日

日中のみです。ちなみに、先述した車庫証明(保管場合標章)の郵送はOSS利用時のみの上、車庫証明取得のみでOSSの使用はできません(あくまで

登録が主のサービスなので)。

 というわけで、電子申請における壁の例として、押印の話をしてきました。まずは、電子署名に実印の押印と匹敵する公証力を如何に確保させるか+

デジタルに弱い方々にとってどれだけ使用させやすくするか、という相反する2つをいかに成り立たせるかが、カギと思われますが、さて、どうなる

ことやら。

 もう1つ、「紙で取り寄せた証明書類をスキャンして電子化しなければいけない」というのは、戸籍関係の話。意外に許認可申請で住民票・身分証明書

((準)禁治産宣告・破産宣告・破産手続開始決定・後見登記の通知を受けていないことの証明)が必要というケースはあります。戸籍謄抄本含めてこの

辺の書類は電子データでは受け取れない、許認可庁側のシステムでもバックヤード連携していない(そりゃそうですがね。法人の情報ならばともかく、個

人情報の最重要項目である戸籍関係が簡単に一覧されたら大変な事態ですから)ので、これらはひとまず紙で入手して、申請者自身でデジタル化するしか

ありません。

 というわけで、申請の電子化が進む、ということは長い目で見れば、申請の簡易化が進むことであり、我々士業の専門性が必要なくなるということに

なっていくのでしょうが、一朝一夕にいくわけではないとも考えています。むしろ、システムの開始直後は使い勝手の悪さを如何に乗り越えるか、がメイ

ンになるでしょう。逆に使い勝手の良くないシステムにどれだけ精通できるかが、我々には重要になるのかと思う次第です。

 そのためには、PCのスキルを上げなければ、ということになるわけですね。少なくともワードプレスの扱いにも慣れて、HPももっと手早く更新できな

ければ、という事ですか・・・。なんか、自分の首を絞める結論になったな(苦笑)。

 というわけで、最後までお読みいただきありがとうございました。それでは、また次回。


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