戸籍はまとめて取れます


 先日の3月1日から改正戸籍法が施行されました。何が変わったかというと

1 戸籍証明書の広域交付

2 戸籍届出時における戸籍証明書等の添付負担の軽減

3 マイナンバー制度の活用による戸籍証明書の添付省略

今のところ、この3点が変わりました。

2 戸籍届出時における戸籍証明書等の添付負担の軽減については、婚姻届出時・養子縁組届など提出の際、届出先の役所が本籍確認ができるようになる

ので、戸籍謄抄本などの書類が不要になるという話です。

3 マイナンバー制度の活用による戸籍証明書の添付省略については、児童扶養認定手続や健康保険の被扶養者認定などの、親子関係・婚姻関係の確認が

マイナンバー制度の活用によってできるようになるので、戸籍謄抄本などの添付が不要になるという話です。こちらは当欄であれこれ書いても、最終的に

は社労士さんの方の話になってしまうので、この辺で。

 行政書士的に見れば、一番大きな変化は、1 戸籍証明書の広域交付制度の開始、となります。ポイントは

◎ 本籍地以外でも戸籍証明書・除籍証明書の発行が可能になる

◎ 本人分以外でも、配偶者・直系血族(子・孫・両親・祖父母など)の戸籍(除籍)証明書が取得できる

 籍を離れた直系血族(子・孫・両親・祖父母など)に、委任状なしで自分の戸籍証明書を取得してもらうことができる

ということです。この組み合わせにより、相続時の戸籍収集の手間が減るということです。相続ではとにかく相続人・被相続人の戸籍謄本や除籍謄本を出

せ、という場面が多いです。この際に厄介なのは、被相続人(亡くなられた方)に関しては、出生時から亡くなるまでの戸籍謄本を集める必要があるので

すが、本籍地が変わるとその度に戸籍謄本が変わってしまうということです。今までは、当該の市区町村の役場に請求しないと発行されなかったのが、こ

れからは最寄り市区町村の役場に行けば(被相続人が亡くなった時の役場や、請求者が籍を置いている役場でなくても可)、一括で発行されます。

 もちろん相続時でなくても、何かの事情で戸籍証明書が必要であれば、本人の代わりに、配偶者・直系血族による取得ができます

ちなみに「籍を離れた」と書いてあるのは、同じ戸籍内に記載されていれば、今までも委任状なしで取得できたからです(なので、3番目には配偶者を

書いてないわけです)。

 ただし、注意点としては

◎ 本人、請求できる人配偶者または直系血族)が窓口で請求しなけれななりません・・・× 郵送 兄弟姉妹による請求 代理人 私たち士業

 〇 請求時には、マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなどの身分証明書が必要です。

◎ 戸籍の附票・身分証明書などは不可

◎ コンピューター化される前の戸籍証明書(改正原戸籍)は対象外・・・平成6年以前のもの

という点があるので、まだ今の段階では、被相続人の戸籍謄本が一括で集まらない場面はまだまだ多いかとも思います。

この辺の話は、こちらの方に詳しく記してありますので、よろしければご覧ください。

 ⇒ 戸籍謄本はまとめて取れるように…なる

 これを受ける形で、証明書の請求が変わっているかと思います。広域交付用の請求書等の書類が新しく発行された役場も多いかと思います。

筆者の場合、うちの事務所の所在地上札幌市の例で

⇒ 札幌市 戸籍交付請求書(広域交付)

 請求書の必要数の欄の注意書きに、本人、配偶者、直系尊属、直系卑属しか請求できないとあることから、これらの人しか戸籍(除籍)証明書を取得で

きないことがわかります。

 また、ここではリンクを貼っていませんが、通常の戸籍証明等請求書において、請求者と証明書が必要な人との関係欄で、請求者が本人・配偶者、直系

血族であれば、委任状や具体的な使用目的が確認できる資料なしで請求できることがわかります(請求者の身分証明書は必要)。

 これにより、結婚して親の籍を離れた子が、親の戸籍証明書を取得する際に委任状なしで取得できることになります(逆もあり…仕事中の子供の戸籍証

明書を代わりに親が取得するなど)。どれぐらいあるかわかりませんが、祖父母と孫の場合も同じことが言えます(祖父母と孫が同じ戸籍謄本に載ってい

ることは、まずない)。

 ところで、もう1つ今回の戸籍法改正で変わることがあります。

 前述の、江別市の戸籍証明書等の請求書にも記載がありますが、必要な証明の種類に「戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号」というのがあります。

一体これは何かというと、この戸籍(除籍)電子証明書提供用識別符号を行政機関に提出すると、その行政機関が提出された符号より戸籍電子証明書を確

認することができるので、戸籍証明書等の提出が不要になる、というものです。この符号は英数字16桁からなるもので、有効期間が3か月のパスワードで

す。

 現在、使用例として挙げられているのは、パスポートの取得

の際に、申請書と合わせて戸籍電子証明書提供用識別符号を提出

することで、戸籍証明書等の添付が不要になり、オンラインで手

続きが完結する、というケースです。

 しかし、現状は符号を発行して貰うことはできますが、利用

できる行政機関のシステムの整備待ちの状況です。実際の運用開

始は令和6年度末の予定だそうです。

 戸籍電子証明書提供用識別符号を取得できるのは、戸籍証明書等の場合と同じく、本人の他に配偶者・直系血族の取得が可能であり、窓口での請求は

本籍地以外でも可能です。ただし、郵送や代理人による請求は本籍地のみです。また、マイナポータル経由での申請も可能でこの場合は料金も無料にな

ります(窓口では有料…戸籍の場合400円、除籍の場合700円、ただし同内容の戸籍(除籍)証明書と同時発行だと無料)。

 というわけで、今回の改正戸籍法の施行で、相続時の戸籍収集作業の簡便化が図られるのですが、必要のたびに戸籍(除籍)証明書を集めると、手間は

減っても、証明書そのものは有料ですので、ちりも積もれば何とやらになってきます。

 相続の際には、一度必要な戸籍を集めてしまい、法定相続情報証明制度を利用して法定相続情報一覧図を作成するのがお勧めです。その際、今までは自

分達で戸籍を集めるか、私達士業に1から任せるか、という選択で手間ひまを考えると、士業にお任せというパターンも多かったとは思いますが、これか

らは(特に被相続人の配偶者が役場の窓口へ行けるのであれば)、自分たちで集めるというのがファーストチョイスになるのでしょう(こちらとしては食

い扶持が1つ減ることになりますが…)。逆に言えば、こういうことをちゃんと説明しない士業は、信用度という点では?と言えるかもしれません。

 3月3日現在の話ですが、一昨日3月1日から始まったこの制度、早速利用されている方が多いようで、全国の自治体から国のシステムへアクセスが集

中していて発行に時間を要しているようです。さらに、戸籍事務を所管する法務省からの通知により、当面の間、請求があった際は本籍地の市区町村に発

行の可否等の確認が必要となりました。そのため、証明書の発行に長時間を要し、後日のお渡しになることもあるようなので、急いでこの制度を利用しよ

うとしている方はご注意ください。まあ、戸籍や住民票関係の窓口は3月・4月はそうでなくても混んでいるので、その辺も留意しておいた方が良いと思

われます。

 というわけで、今回はここまで。最後までお読みいただきありがとうございました。それでは、また。


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