
この11月24日に来年=令和6年3月から、改正戸籍法が施行
され、戸籍に関する行政手続きが簡素化されることになります。
メディアでも、そこそこの取り上げ方をされていたので、ご存
知の方もいらっしゃるのではないでしょうか。と、いっても
なので、昨日今日出た話ではないんですよね。実は法律自体は令
和元年5月24日に成立しており、それがほぼ5年経ってようやく
施行の運びとなったわけです。
では、何ができるようになるのか。
① 社会保障手続で戸籍謄抄本の提出を省略できる
自治体の窓口で、マイナンバーを伝えることにより、窓口で親子・姻戚関係の確認ができるようになるので、従来必要だった戸籍謄抄本の添付
を省略できるようになります。具体的には
・ 児童扶養手当の支給事務における続柄・死亡の事実・婚姻歴の確認
・ 国民年金の第3号被保険者(被保険者に扶養されている主婦・主夫など)の資格取得事務における婚姻歴の確認
・ 奨学金の返還免除事務における死亡の事実の確認
・ 健康保険の被扶養者の認定事務における続柄の確認
などがあります。しかし、引き続き戸籍謄抄本が必要な場合もあるようです。
と、いったところで、こちらは行政書士業務とは、あまり関係ない話ですね・・・。
② 戸籍の届出における戸籍謄抄本の提出の不要化
婚姻届・養子縁組届など様々な戸籍の届出の際に、戸籍謄抄本の提出が不要になります。
さらに、提出した戸籍の届出が電子化され、速やかに新しい戸籍謄抄本が発行できるようになる、との事です。
これも、婚姻届は本籍と関係なく提出できるのですが、出された役所では(本籍地でない役所に提出された場合)婚姻届に記載された本籍地が正しいか
どうかわからないので、証明が必要だったわけですね。それが確認できるようになるので、戸籍謄抄本の提出が不要になるわけです。
まあ、婚姻届なども、直接こちらで作成するものではないので、仕事的には・・・といった話ですね。ただ、この辺に関しては書き方がわからない
といった場合にお答えします、というのはあるので、把握しておく必要はありそうです
ちなみに、婚姻届・養子縁組届には証人欄があるので証人が必要なのですが、証人代行サービスという形でこれらに関わる行政書士はいます。証人に
なるための条件は成人であること、だけなので、親・親戚・友人・職場の同僚、何ならその辺の人でも成人でさえあればOKです。しかも今は押印不要な
ので(押すのは自由です)、ハンコを持ち歩いているその辺の人、となるとまあそんなに簡単ではないでしょうが、今は大丈夫。と、言いたいところです
が、証人にも本籍記入欄があるんですよね。友達に「婚姻届の証人になってくれない?」と頼めば、まあそれなりに親しい友達なら「いいよ」と返事をし
てくれるでしょうが、初めて書く人は本籍欄を見て「ごめん…本籍わかんないわ・・・」となって、そこで話が行き詰まるということもあるでしょう。
婚姻届の実物をご覧になりたい方はこちら 札幌市役所ホームページ 婚姻届
本籍地を確認しようとすると、住民票の写しまたは戸籍謄抄本を取得することになります。マイナカードの利用でコンビニでも取れるようになったとは
いえ有料ですからね。本当に親しい友人ならそれぐらいの手間暇&お金もかけてくれるでしょうが(別にかけないからといって本当に親しい友人ではない
とはなりませんが)、それなりの親しさだと頼む方も考えるところになるかもしれません。
その他、諸事情があって、証人を立てられないなどの場合に、代行サービスを使うということもあるのでしょう(ウチも考えようかな・・・)。
タイトル下の写真は、この話題の関係でそれっぽい写真にしましたが、本日の本題はこの後の話(前段が長い)。カップルとは何の関係もない話(むし
ろ逆の話)です。
③ 本籍地以外の市区町村でも戸籍謄本の発行ができる
本籍地が遠隔地にあっても、申請者の住んでいる市区町村・勤務地の最寄りの市区町村の役場の窓口で、自分・配偶者・父母・祖父母・子・孫
の戸籍謄本・除籍謄本・改製原戸籍を取得できるようになります。

※ コンピュータ化されていない一部の戸籍・除籍は除く ※ 一部事項証明書・個人事項証明書は除く ※ 住民票は取得不可
※ 窓口では身分証明書=マイナンバーカード・運転免許証・パスポートなどが必要
私ら行政書士のみならず、相続を扱う士業にとって一番大きな改正ポイントはこの話です。
相続手続の際には、相続人・被相続人(亡くなられた方)の戸籍が様々な場面で必要になります。現在は戸籍謄本を取得しようとすると本籍地の市区町
村役場に請求しなければなりません。遺された相続人の分は、ご自身の本籍地はわかっているでしょうから、どうにかなるでしょう(ならないときは私ら
の出番ですね)。問題は被相続人の方です。被相続人に関しては、死亡時から出生時までさかのぼって全て取得しなければなりません。
亡くなられた方が生まれた時からずっと、同一市区町村から全く本籍を移動させていなければ、請求先は1か所で済みます。しかし日本中を転々と引っ
越していてその度に本籍を動かしていると、それぞれの市区町村に請求しなければいけません。郵送があるので、日本中を廻って集める必要はありません
が、手間もお金もかかります。それでも、最初=亡くなった時の本籍地の戸籍謄本を取った時に全ての移動過程がわかればいいのですが、残念ながらわか
るのは1つ前だけ。つまり、どこからその本籍地に来たかがわかるだけで、その前がどうなっているかはわからないわけです。したがって、戸籍謄本を1
枚取り寄せて、前の本籍が書いてあると、またそれを取り寄せての繰り返しになります。この請求・交付を郵送で繰り返せば時間もかかるわけです。
この作業が、最寄りの市区町村役場に行って、窓口で請求すれば一発で全部交付されるわけですから、手間暇は大きく減ります。裏を返せば手間暇が
減るという事は、その分私ら士業に頼まなくてもいいか、という話にもなってきます。
ただし、この制度が万全かといえば、いろいろ不便なところもあります。
不便なポイント
① 代理人による申請は不可
② 窓口での請求でしか、一括交付はされない
③ 請求者の兄弟姉妹・おじ・おばは対象外
① 代理人による申請は不可 & ② 窓口の請求でしか、一括交付されない、という条件があるので、役所の開いている時間に、自分で行かなければ
いけないわけです。さらに困ったことに、我々士業もこの制度を使えません。交付してくれる役場は、自分の本籍地や住民票のある市区町村には限られな
いので、職場のそばの役所で昼休みを利用して、ということもできますが、休めない・時間を取れないという方には、郵送不可・代理人不可というのは不
便といえるでしょう。
さらに、自分が相続人になっていれば、被相続人が誰であってもこの制度を使えるわけではないのが③です。利用できるのは、自分・配偶者・父母・祖
父母・子・孫=いわゆる直系尊属・直系卑属の場合だけですので、兄弟姉妹やおじ・おばの相続ではこの制度は使えません。

戸籍が集まったからといって後がスムーズに進むわけではないのが相続ですが、とは言え、第一歩目の戸籍収集がラクになるのはいい事とは言えます。
私ら行政書士の仕事のスキームも、戸籍謄本等を集めるのをこちら(行政書士)で行うのか、ご自身でされるか、この制度を説明した上でご依頼者様自ら
決めていただくのが、標準になっていくのでしょう。何せご自身で集めれば、費用面のみならず時間も早く済みますからね。というか、相続人が配偶者と
お子様だけの場合、被相続人の本籍が転々としていたときは、新しいシステムでは逆立ちしても、こちらは時間では勝てません。手間暇と引き換えになる
のが、コストダウンにスピードアップとなったら、充分わりに合う話になってくるでしょう。
さらに言えば、先ほど例に出した相続人が配偶者とお子様だけの場合、申請者がお子様の場合、兄弟姉妹の戸籍請求はできませんが、申請者が配偶者の
場合は被相続人・相続人すべての戸籍を取得できます(先述の兄弟姉妹は配偶者から見れば子)。つまり、同じ相続人という立場でも、誰が申請するかで
請求できる範囲が変わってきます。もっとも相続人に関しては戸籍謄本以外にも必要な書類が出てくる(多いのは印鑑証明書)ので、お子様ご自身で集め
られるなり、行政書士に委任していただくなり、その辺も考える必要があるでしょう。もちろん請求できる方の健康問題、時間が取れるか(窓口に行くの
は必須)も大事な要素です。
繰り返しになりますが、今回の改正戸籍法の施行によって可能になる、本籍地以外でも戸籍謄本が発行できるという制度は、相続手続きの第一歩目の作
業の話です。つまり、この制度は相続手続が始まる段階で知っているかどうかが、大きな分かれ目になってしまうわけです。行政(役所)でも死亡届を
出した段階で教えてくれるなり、パンフレットをくれるなりしてくれれば良いのですが、さてどうなるのでしょうか。
また、この先相続手続きも(相続だけではないのですが)行政のデジタル化・オンライン化も相まって、刻一刻と変わっていきます。我々行政書士も
制度の変化に合わせてどのような方法がベストなのか模索し続け、ご依頼者様に合わせて提案できるかが、今まで以上に肝要になると思っています。
このような、駄文のブログでも、情報をお伝えできればと、思っています。それならもっと頻々更新しろ、と言われるとぐうの音も出ませんが…。
ここまでお読みいただきありがとうございました。次回はもう少し早く更新したいと思います(中身はないかもしれませんが…。)それではまた。