第3子とは


 先日、少子化対策の一環として、「多子世帯の大学授業無償化」の方針が示されました。具体的には、大学の年間授業料(入学金も含む)に対して

国公立大学の場合で、入学金28万円と年間授業料54万円私立大学の場合で、入学金26万円と年間授業料70万円(すべて最大の場合)が支援対象

になります。令和3年(2021年)度の文部科学省のデータによると、国立大学の標準額は入学金で282,000円、授業料で535,800円です。ちなみに入

学金は平成14年(2002年)、授業料は平成17年(2005年)から据え置かれています。公立大学の平均額は入学金で391,305円(地域外からの

入学の場合)、授業料で536,363円。私立大学の平均額は入学金で245,951円、授業料で930,943円です。実施は2025年度からの予定です。

参考 文部科学省 国公私立大学の授業料等の推移

 このとおりに決まれば、国立大学に関してはほぼ全額、公立大学に関しては、域外から進学する場合の入学金で少々不足、私立大学に関しては、授業料

の4分の3ほどの支援ということになります。もっとも私立大学の場合、文系学部は平均額より安くなるので、8割以上の支援になる可能性が高いでしょ

う。逆に理系学部は平均額より高くなる可能性が高い(100万を超える)ので、5割~7割に満たないぐらい、医・歯学部では3割にも満たないという感

じになります。さらに、国公立・私立問わず気を付けなければいけないのは、施設設備費や実験実習費、教材費などは入っていません。なので、こんな事

はご存知だと思われますが、本当にお金を使わずに大学に行けるという話ではありません。ちなみに、令和3年度の私立大学の施設設備費の平均額は

180,186円、実験実習料の平均額は34,462円、その他が91,423円となっています。その他詳細は以下をご覧になってください。

参考 文部科学省 令和3年度私立大学入学者に係る初年度学生納付金平均額の調査結果について

 といっても、進学する子に対し、国公立大学に進学した場合4年間で最大244万円私立大学の場合では4年間で最大306万円の支援を得られるのな

ら、大学入学までの(最低)18年間をどうにかできれば(それが大変なんだ、という話はここでは一旦置いておいて…)、3人目も考えようか、と思わ

れる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、この“第3子”という言葉にはタネがあります

 普通に考えれば、3番目に産まれた子供が第3子のはずです。

そして、この3番目に産まれた子はずっと第3子のはずです。突

然、第3子が第2子になったり第1子になったりすることはあり

ません。ところが、最近国から打ち出されている多子世帯に対す

る、第3子以降への支援の話では、第3子が第2子になったり第

1子になったりするのです(第3子が第1子になるのは、第1

子・第2子が双子の場合など)。

 最近の国の第3子以降に対する支援としては、第3子以降に対する児童手当の拡充、があります。現行と新しい児童手当の比較が以下の表です。

年齢第1子・第2子第3子以降
現行3歳未満1万5千円1万5千円
3歳から小学生1万円1万5千円
中学生1万円1万円
高校生なしなし
3歳未満1万5千円3万円
3歳から小学生1万円3万円
中学生1万円3万円
高校生1万円3万円
月額

 赤字の部分が、新しい児童手当で拡充される部分です。ポイントは、①高校生まで児童手当の対象になる ②第3子以降は一律3万円ということ

実施は2024年12月からの予定です。

 つまり、新しい児童手当で満額の支給を受ければ、12か月×18年×3万円=648万円になるのですが、まあ、そんなケースはまずありません。な

ぜなら、第3子が第2子になってしまうから。現行の児童手当法では

「第3子以降」とは、高校卒業まで(18歳の誕生日後の最初の3月31日まで)養育しているお子さんのうち3番目以降をいいます

(引用 こども家庭庁 児童手当制度のご案内 より)

 例 3人兄弟がそれぞれ3歳差の場合・・・第3子が中学1年になると、第1子は19歳になってしまうので、第3子は第2子に繰り上がる

(正確には、第1子が18歳の誕生日の後の最初の4月1日になると第3子➡第2子になる ※第1子・第2子が双子だと第1子になる)

 なので、第3子に対する児童手当を満額で受けようとすると、三つ子以上の場合しかない、となってしまいます。さらに言うと、第1子との年齢差が18

歳になってしまうと、子供が3人いても、この末子には(児童手当法的には)第3子の瞬間が全くない、ということになってしまいます。

 まあ、この例は極端としても、同じ3人子供がいても年齢差によって総支給額が変わるのはどうなのか、という意見は当然出るでしょう。

 そこで、今回の児童手当の拡充に合わせて、大学生まで“子”とすることで、第3子に対する支給期間を延長しようという検討がされています。冒頭の

多子世帯の大学無償化の話を考えれば、少なくとも第1子の“子”の期間を延長しないと、大学に行っている“子”など、存在しないことになりますからね。

まあ、これでも、第1子と第3子以降が”ある程度”年齢が離れると18年フル支給とはならないのですが・・・。

 冒頭の多子世帯の大学無償化が複雑になりそうなのは、この大学無償化の対象が短大・専門学校・高専・医・薬学部などの6年生大学であるから。

さらに、ややこしくなりそうなのが、第1子が大学院に進学した場合は、無償化の対象外ではありますが、扶養家族に入っていることで第2子以降の授業

料が無償化の可能性もありえます。つまり、進学先によって第1子が“子”である期間が変わってしまうわけです。また、進学先の学生数と収容定員の状況

では、無償化の対象外の学校になる場合もあるようです。

 ただ、これだけを見れば、少なくとも第1子が大学などに進学すれば、第1子の授業料だけは支援されそうに見えます。しかし、第1子が4年制大学に

進学、1歳下の第2子が短大に進学した場合、第2子が第1子より1年早く卒業するので、第2子が“子”から外れることになります。極端な例では第1子

・第2子が双子で、どちらかが進学しない場合。そうなると、現行案では、もう1人が進学しても支援なしの可能性もあります。

 児童手当拡充の件も、多子世帯の大学無償化の件も、詳細な制度設計はこれから出て来ると思われますが、子供が3人以上いるからといって、自分の世

帯が支援対象となるかどうかは、これから出てくる情報をチェックする必要があるようです。こちらでも、情報が出てくれば取り上げていきたいと思って

います。最後までお読みいただきありがとうございました。では、また次回。


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